詳しくお知りになりたい方は巻末の資料1をご参考下さい。吹きつけアスベストの場合も、劣化や様々な行為が石綿(アスベスト)濃度に影響を与える事がわかります。
対照的に石綿とゴム等の製品を混合して結合が強い製品は飛散がしにくい製品の代表と考えられ、Pタイル等はそのまままでは飛散しにくい製品の代表といえるでしょう。一概にはいえませんが、重さの軽いもの(かさ比重の低いもの)が飛散しやすい傾向があり、重いもの(かさ比重の高い)ものは、飛散しにくい傾向もあります。建材の多くを占める石綿(アスベスト)含有ボード等は、建築物中に存在するだけならとりたてて飛散するわけではありません。
しかし石綿製品には使用により劣化や変質するものと、使用初期から経年劣化により飛散しやすくなるものがあります。波形スレートは経年的にセメントが脱落する傾向があり、経年劣化があることが有名です。
問題はどの石綿製品でも、こすったり、割ったり、機械等で切断したり、外力がかかれば程度は異なりますが、石綿繊維が飛散するのが共通な事です。クリソタイルの石綿製品の多くが諸外国で禁止され、日本でも今回禁止となるのは石綿(クリソタイル)製品を使用すれば、使用時と補修時や除去時に飛散がさけられないからです。一部で言われた「非飛散性石綿」という表現は、誤解を招くので使用されない傾向にあります。最盛期に3000種類とされた石綿製品の様々な行為時及び経年劣化の濃度のすべては、十分には調査ができてはいません。類似の製品の石綿濃度データで類推して頂くことも必要だと思います。
5. 石綿(アスベスト)は、どこで産出されるのですか?
日本でも石綿は産出されており、江戸時代に秩父の石綿が布として使用された話もあります。日本の石綿消費の多くは、カナダや南アフリカやロシア等の諸外国からの輸入が主でした。世界の主要な石綿生産国は変遷しますが、旧ソ連(現ロシア等)、カナダ、南アフリカ、中国、ブラジル等です。第2次世界大戦中に連合国は日本への石綿の輸出を制限したために、日本の各地や韓国で石綿鉱山の開発が進みました。戦後も同様に輸入が主でしたが、一部の石綿鉱山が稼働していました。世界の石綿の産出量の概要を示します。日本の鉱山や土壌中の石綿については今後お示ししていきます。
6. 日本の石綿(アスベスト)輸入量はどれくらいですか?
日本の石綿輸入量(出典 日本関税貿易統計 全国安全センター作成)
7. 石綿(アスベスト)の問題は、終わったと思っていたのですが?
対策が進んだから、今後アスベストは大丈夫と考える発想こそが陥穽だったと思います。
この間アスベストの危険等を促す報道で視聴者が不安を感じた後に、一定の対策とその報道で一件落着、という様な受け止め方が多く、その後の検証の報道もなかったと思われます。そのため含め多くの人が既に対策済みと誤解してきたし、多くの国民が石綿(アスベスト)は過去の問題と誤解してきたと思われます。
現在までのアスベストでの大きな展開は、4回あったと思われるのです。
第1回目は、1975年の「危険な吹き付けアスベストの新規使用禁止」という対策で、確かに大きな進展ではあるのですが、「重量で5%以上が石綿(アスベスト)」との定義を元に、「実際には岩綿(ロックウール)にアスベストを5%以上超えて混ぜ吹き付けていた(多くの業者の証言)」という実態は明らかにされず、1987-88年に一部の関係者が問題に気づいたままで現在に至ってしまっています。
第二には1988年の吹き付けアスベストの危険報道で、多くの人に石綿(アスベスト)のかなり危険の認識は高まった一方で、「学校の吹き付け石綿(アスベスト)は、除去・封じ込め・表面固化処理の対策」の報道で、「石綿(アスベスト)問題は終わった。」と多くの国民が考えていました。しかし「文部省の通達の対象は3商品名で、多くの吹き付けアスベスト材が調査に漏れていた。」のが実態で、学校以外の公共建築物や民間の建築物の吹きつけ石綿問題も残されたままでした。
第3は1995年の阪神・淡路大震災後の対策で、「改築及び解体に際してアスベスト吹き付けや建材の時前の記録を義務づけ」ましたが、記録する主任等の制度が十分でなく、費用負担もあり、多くの現場で実態としてアスベスト含有建材の事前記録は実施されていませんでした。
第4回目は、2002年の中皮腫の将来予測、その後の石綿の自動車や主要建材での禁止、横須賀の石綿訴訟の国の敗訴、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの活動、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の活動、2004世界アスベスト会議東京の開催、と報道は増加しています。
今回2004年のアスベストの報道が適切でないと、「色々な問題や被災者は今後でるが」、対策としては「アスベストも禁止され、新規使用はないし」と誤解し、「今後の曝露防止対策もたったようだ。」と多くの国民が理解したら大変危険です。2005年以降の検証報道が、今後の人々の健康と命の予防に重要であると思います。
労働安全衛生と環境問題は連続しており、一体の問題としてとらえる視点が重要です。職場での安全衛生活動が充実し、リスクの把握ができて対策が立てられれば、環境への飛散は当然なくなります。労働環境でアスベスト飛散が続く限り、環境への飛散もなくなりません。住民の立場での飛散の監視と、働く作業者の自主的な安全衛生活動の協同が重要だと思います。さらに施主責任の強化と、監督署による監督、違法例への法的処罰等の複合した対策が必要でしょう。今後の石綿(アスベスト)飛散の防止と石綿(アスベスト)被災者の救済は、今後予想される10万人規模での被害、曝露労働者の総数は数百万人規模、環境での国民全員への曝露を考えると、大変重要な問題であり、石綿(アスベスト)の問題は、2040-50年ま で続く大きな問題である事は確実だと思います。
8. 石綿(アスベスト)が危険とされて問題になるのは何故ですか?
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